他CPで「鶴の恩返し」パロを拝読して妄想したツキコイ版です
こういう原型を留めないパロは自分ではキャラらしく表現できないので供養
「鯉の恩返し」
昔々あるところにツキシマという貧しいけれど実直な男がおりました
畑仕事にいく途中には広い沼がありそこには立派な錦鯉が住んでいました
ツキシマはしばしば足を止めてその錦鯉を眺めておりました
ある日その錦鯉を捕まえて売るために沼に毒を流そうとしていた不埒者を見つけたツキシマはこてんぱんにやっつけて追い払い被害は最少ですみました
その日の晩に一人暮らしのツキシマの家を訪ねてきた者がいました
戸を開けると褐色の肌をした美しい若者が立っていました
道に迷ったので一晩泊めてくれと言われたツキシマは快く迎え入れ
なんとなく具合の悪そうな様子の若者を貧しいながらも心からもてなしました
元気になった若者は礼だといって畑仕事や薪割りを手伝いました
数日がすぎ 家に帰らなくていいのかと問うツキシマに
若者は家も身よりもないからここに住まわせてくれと頼みました
身なりはよいのに家がないのかと驚きながらもツキシマがそれを承諾すると
若者は懐から虹色に光る透き通った小さな丸い板のようなものを取り出しました
金になるから町へ行って売ってくるがいいという若者の言葉どおりにすると
こんな珍品は見たことがないと高く売れました
ツキシマこそ家族はいないのかと尋ねられて
将来を誓った女はいたけれど自分が戦に行っている間に死んだと思われて
遠くの金持ちの嫁になってしまったと話すツキシマ
若者は悲しげにそれを聞いていました
わがままなところもあるけれど素直な若者との生活は楽しく
たまに若者がくれる虹色の板を売って暮らし向きも少しずつ良くなりました
ただ虹色の板をくれるたびに元気がなくなる若者の様子だけがツキシマの気がかりでした
そんな日々のなか若者が一人で出かけた後をツキシマが追うと
若者はあの沼のほとりで着物を脱いで足を水に浸しました
すると水に浸ったところが魚の体になりました
若者はそこから虹色に輝く鱗を一枚ぺきりと剥がしました
その時に苦しそうに顔を歪めるのを見てツキシマは胸が痛みました
ツキシマは気づかれないよう先に家に戻って若者の帰りを待ちました
やがて帰ってきた若者がいつものように鱗を差し出すのを見て
これをくれるたびに具合悪そうにしているのが辛い お金などいらない
あなたに惹かれているからただ側にいてほしい と若者を抱きしめました
若者は私も優しいツキシマが好きだと答えて二人は結ばれました
身も心も愛し合いながら二人はつつましくも幸せに暮らしていましたが
若者がいない時にこのあたりを治める権力者の息子がやってきました
例の珍品には不老不死の力が備わっているという言い伝えがある
お前が町へ売りに来るようになったのはあの若い男が住み着いてから
金を払うからあの男をこちらへ渡せ と言います
ツキシマは咄嗟に
若者は旅の途中に少し滞在しただけでもう出ていってしまったと嘘をつきました
権力者の息子が去ったあとツキシマは若者に身を隠すように告げなくてはと
急いで探しに行きました
その頃 若者は沼に足を浸していました
若者は鯉の化身でしたが人間と交わると段々と鯉に戻れなくなってしまうのです
今までのようにすぐには魚の体に戻れなくなっていることを確認し
ツキシマと一緒にいられるのならそれでもいいと思うけれど変わっていく体に不安を覚える若者
そこへ権力者の息子がやってきました
裸の若者を見てよくない考えを起こし
ツキシマに大金を払ってお前を買った お前ほどの器量なら宝がなくともいくらでも稼げると襲いかかりました
足がすぐには動かないうえにツキシマに売られたという言葉に動揺して若者は組み敷かれてしまいます
そこに駆けつけたツキシマは激昂して権力者の息子を半殺しにしてしまいました
もうここにはいられないと逃げる二人に追手が迫ります
走って走って辿り着いた先には増水した大きな川 一か八か飛び込む二人
若者の半身は鯉に戻り力尽きそうなツキシマを背負って泳ぎます
しかしもう鯉としての力はほとんど残っていません
沈みかけた時にツキシマの懐から鱗が落ちました
最後に渡された鱗を売る気になれなくて大事に持っていたのです
その鱗によって若者は最後の力を振り絞り二人は向こう岸に泳ぎ着きました
化生の者であることを知られたうえにもう鯉に戻ることもできないと若者は嘆きますが
人間でないことは知っていた それでもあなたを愛しているというツキシマ
若者は人間になって二人は幸せに暮らしました
おしまい
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